写真は、人となりが出るもの。
多少ヘタでも人として面白ければ、期待して待つ。

町口 覚 art director /graphic designer

造った後、本がどう成長するかを見届けたい。

---「M label」の作品にはどんなものがありますか?

これまでに3冊の写真集を造りました。大森克己さんの『encounter』、野村佐紀子さんの『tsukuyomi』、同じく野村さんの『近藤良平』。すべて28頁という軽い体裁になっています。次に行くためのステップにもなる写真集ということで、大森さんとは昨年、写真集『サナヨラ』(愛育社)を出版することができましたし、野村さんとは新作写真集(リトルモアより刊行予定)を制作中です。

今、軽い気持ちで「M label」で遊ばない?って声をかけている写真家には、野口里佳さん、元田敬三くん、野村浩さん、ノニータさんなどがいます。今年の春、続けて造る予定です。

---佐内正史さんとも何冊かありますよね。

まだ、佐内とは「M label」では遊んでいません(笑)。最近、佐内も自分のレーベル「対照」を立ち上げました。僕は造本アドバイザーとして参加しています(笑)。今年2月には写真集『浮浪』を出版する予定です。佐内とは、1997年に出版したデビュー写真集『生きている』(青幻舎)からの付き合いなので身内みたいなものですね。「対照」レーベルからは、『浮浪』の後にも立て続けに出版していく予定です。

---映画監督の河瀬直美さんの写真集も出したとか。

僕は造本をしていますが、発行人は奈良のギャラリーの方なんです。写真集は、河瀬さんが自分の家で子供を出産したときの現場を、写真家の百々俊二さんが撮りおろした写真で構成されています。

河瀬さんと百々さんは、奈良をすごく愛しているんです。そのふたりの奈良を愛する想いが東京生まれの僕にも伝わって、造本に奈良晒(さらし)を使うなどして、ものすごく丁寧に造ることができました。僕の書籍販売ウェブサイト「book shop m」で販売もさせてもらっています。28,000円という高価な写真集にも関わらず、世代を問わずいろいろな方が購入してくれています。

----「M label」の本は「book shop m」でのネット販売が中心ですよね。

確かに「book shop m」でのネット販売が中心ですが、一部の書店でも取扱っていただいています。本も人と同じで、成長するものだと思うんです。ネット販売にしても書店販売にしても、その本がどう成長していくかという過程を見守りたいと思っています。読者の方が直接ウェブサイトに買いたいと申し込みをしてくれたり、書店の担当者とのやりとりがある。そういうコミュニケーション行為は、もの造りと同じようにずっと続けていきたいと思っています。

----本の行く先まで見届けるアートディレクターはあまりいないのでは?

確かにそうかもしれませんね。でも、例えるならウェブサイトは自宅で、書店は幼稚園みたいなものですかね(笑)。そう考えると楽しいじゃないですか。自宅では、僕や担当者が親みたいなもので、書店の担当者は幼稚園の先生。自分の子供である本を、幼稚園という書店に預けて、うちの子は人気があるか、うちの子の周りにはどういう子がいるのかを先生に聞いている感じですかね。

そういうコミュニケーションの中で得たことが、デザインすることにとても役立つと思うんです。もの造りをしているのに、そのものを見届けないのは、今のどうしようもない社会と同じでよくないですよ。

今は大したことないけど、
いつかいい写真を撮るという気配を感じることも

----写真集を造る時は、どういう部分に時間をかけるんですか?

僕の場合、写真家との対話ですね。写真って、写真家の人となりが出ると思うんですよね。写真家の人となりが出てこない写真は面白くないし、多少写真がヘタでも、その写真家の人となりが面白ければ、期待して待つというか。

----人となりを観察するんですね。

どの世界にも生き様が面白い人っていますよね。特に写真家には、そういう人が多いと思います。今は大したことないと思っている人が、いつか撮るような気配がしたりもするんです。だから、まずは人となりをよく観察して、その人の写真も同時に観察していく作業があるんですよ。でもそれがものすごく難しいんですね。写真家の人となりっていうのをちゃんと把握するまでに時間がかかる。で、その写真家の写真を把握するまでにも時間がかかる。そういう地道な作業なんです。

---具体的にどういった作業をするんですか?

写真家にもよりますが、とにかく対話を重ねるしかないですね。会って、話して、写真見て、を繰り返す。

---それはどんな写真集を造る時にも欠かせないことですか?

例えば、報道写真や動物写真やアイドル写真には、この作業はそれほど必要ないと思います。観察すべきことの大半が写真そのものだけで成立していて、写真集にするにはそれをそのように印刷すればいいだけの話ですから。

---魅力を感じる、観察したいと思う写真家とは?

こんな奴は見たことない、で、なんだ?この写真は!っていう写真家をぜひ観察してみたいですね(笑)。

---新人からの売り込みなどもあると思いますが。

基本来る者拒まず、必ず見せてもらうようにしています。ただ、僕の場合、メールでの持ち込み依頼は勘弁してほしいですね。直接、仕事場に電話してきてください(笑)。

Pages 1 | 2
Gallery ギャラリー

『夏秋冬秋』
佐内正史
マッチアンドカンパニー+佐内事務所
2006年

『近藤良平』
野村佐紀子
マッチアンドカンパニー
2006年

『花母 -はは-/河瀬直美』
百々俊二、河瀬直美
Gallery OUT of PLACE
2006年

『encounter』
大森克己
マッチアンドカンパニー
2005年

『Chair Album』
佐内正史
佐内事務所
2003年

『40+1 PHOTOGRAPHERS PIN-UP』
企画・編集=町口 覚
マッチアンドカンパニー
1995年

『生きている』
佐内正史
青幻舍
1997年


『MAP』
佐内正史
佐内事務所
2002年

『凶区/Erotica』
森山大道
朝日新聞社
2007年

『悪人』
吉田修一
朝日新聞社
2007年

『DIRECTOR'S MAGAZINE 10・11月号』
発行元:クリーク・アンド・リバー社
発売元:青幻舍
2007年

Profile プロフィール

町口 覚
Satoshi Machiguchi
アートディレクター/
グラフィックデザイナー


1971年東京生まれ。デザイン事務所マッチアンドカンパニー主宰。95年、同世代の写真家40人の作品を収録した写真集『40+1 PHOTOGRAPHERS PIN-UP』を製作発表し、一躍脚光を浴びる。以来、日本の写真界をリードする写真家たちの写真集を数多く手掛ける。また、映画や演劇のグラフィックデザイン、書籍の装丁なども数多く手掛ける。常に表現者たちと徹底的に向き合い、独自の姿勢でものづくりに取り組んでいる。05年、自身のデザイン事務所から写真集レーベル「M」を立ち上げ、発行・発売元となり、書籍販売Webサイト「book shop m」を運営。07年、大河ドラマ『風林火山』の公共ポスターデザインを担当。現在、家具ブランド『arti』、王子製紙が運営する『OJI PAPER LIBRARY』のトータル・アートディレクションを手掛けている。

URL match and company

http://www.matchandcompany.com/

URL book shop m

http://bookshop-m.com/

Item アイテム

●タバコ
ホープ・スーパーライト。ヘビースモーカーの町口さんの傍には常に数箱が転がっている。ホープ・シリーズの内箱にはそれぞれ別のイラストが入っているが、スーパーライトには天気のマーク。「時々見るんだよ。この前、撮影ですごく疲れた時に見てみたら“晴れ”が出て、ちょっとだけ元気になった(笑)。」ちなみにこの日は“くもりのち晴れ”。

Back number バックナンバー

冨沢ノボル
Noboru Tomizawa
ヘアメイクアップアーティスト

1967年生まれ。1989年東京マックス美容専門学校卒業後、河野ミツル氏に師事。1992年にフリーランスのヘアメイクとして活動を始める。1995年ヘアメイク活動のため渡米(NY)。1998年帰国。2004年にはネイルとピアスのブランド「RHYTHM」を自らプロデュース。 アート作品のようなヘアメイクをファッション誌や広告、PV、コレクションなどで数多く発表する富沢氏。ネイルやピアスのプロデュース、DJとその活動はどんどん発展し続けている。時代の先端を行く“美”をどうつくっているのか、フォトグラファーには何を求めているのだろうか。

PAGE TOP
  • High photo Japanとは?
  • サイトマップ
  • プライバシーポリシー
  • 利用規約
  • 会社概要
  • ヘルプ
  • お問い合わせ
  • アンケート
Adobe Flash Player Download 最新のFlash playerをダウンロード

Copyright(c) High photo japan. All rights reserved.
掲載の写真・記事・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。