オリジナリティを出せる仕事をもらうまでに、自分が成長しなきゃいけないと思った。

第5回 飯田かずな Photographer

来た仕事をありがたくやりつつ、
いつか自分らしさが出せるものをと

---飯田さんならではの作風を確立するまでに、
迷いや紆余曲折はありましたか?

最初はとにかく仕事をしたい、つまり、写真を撮ること=仕事、って思っていたんです。でも、いざ仕事が来始めると、作風なんか求められていない仕事っていっぱいあるんですよね。駆け出しの頃は細かい仕事ばかりなので、自分らしさはほとんど関係ない。その時に初めて知るわけですよね、あ、仕事ってこういうことなんだって。それで、自分のテイストを出せるものをやっていくにはどうしたらいいんだろうと、すごく悩んだ期間はありました。

---どんな答えを出したのですか。

とにかくオリジナリティを出せる仕事をもらうまでに、自分が成長しなきゃいけないと思いました。今は地道に、来た仕事をありがたくやりつつ、いつか自分らしさが出せるものをもらえるようにしていこうと。
当時、仕事の写真と作品をしっかり分けて、仕事でできないものを作品撮りして個展を開いたり、本を出したりしながら、いつか仕事と作品を絶対一緒にしたいなと思っていましたね。今はそれが徐々にできてきたというところです。

---駆け出しの頃は、今はもらえる仕事をやるしかないと、
割り切ってやっていたのですか?

とはいえ、嬉しいんですよ、声をかけてもらうことは。仕事はないよりもある方がいいし、本当はこういう仕事じゃないのもしたいんだけどって思いながらも、仕事ができるってやっぱりありがたいことだし。結局自分がそのレベルに達してないから、今はこの仕事なんだっていうことなんです。
だから電話が鳴ると嬉しかったですよ、「わ〜仕事来たあ」みたいなね。

---仕事の写真に飯田さんらしさが出せるようになったのは、
どうしてなんでしょう?例えば編集者やクライアントに
強い印象を与えた作品などがあったと思いますか?

おじいちゃんおばあちゃんを撮った写真集『富子と君作』の後くらいから、「こんな感じでやって」というオーダーが出てきた気がします。写真にいろいろ合成を加えていくようなコラージュ系の作品だったので、ああいうイメージにしてほしいっていうのも、その頃から増えてきたような感じですね。

---作風を好んで声をかけてくれる方も
増えてきたんですね。

私がモーニング娘。のジャケット写真撮影の手伝いにサブカメラマンとして入った時に、つんく♂さんの周りにも『富子と君作』を知っている人がいて。それが縁でつんく♂さんの深夜番組の企画で映画「マッハ★85」を撮ることになって、同じくそこに参加していた鈴木おさむさんやディレクターのタカハタ秀太さんと出会い、いろいろお仕事を振っていただくようになりました。

---今は仕事で撮るということと、ご自身のテイストが
マッチしていると思うんですが、仕事で撮ることを
現在はどう捉えていますか?

今はあんまり変わらないですね、作品も仕事も。撮る時の自分のスタンスはそんなに変わらないですけど、ただ、責任が違う。作品は自分ひとりのものですけど、仕事はクライアントがあって、お金をもらって、いろんな人が関わってやっているので、ほんとは真剣にやってます(笑)すごく。

---楽しい感じのものがいっぱいあります。

そうですね。ダラダラやるんじゃなくて、遊びも真剣にやった方が面白い。楽しいものを作る現場でも、もちろん裏ではケンカしてたりする時もあるし。でもそれは見る側に伝わらなくてもいいことで、見る人が単純に面白いと思ってくれたら、もうオールオッケー。世の中に出すまでは、面白いと思われるものを真剣に作ってますね。

ドリフやひょうきん族などのお笑い全盛期的なものや、マンガ、アイドルの影響を。中国や北朝鮮にあるような、絵やグッズの感じも大好き

---コラージュや、合成の作り込んだ感じは、
どんな手順で進めるのですか?

だいたい最初に、完成形をイメージした簡単な絵コンテをいくつか描きます。一番おすすめのA案の他に、B案、C案……と描いて、まず担当の人に見せて口頭で説明するんです。決まったら、早速小道具などを調べる。これだと思うものを見つけたら、当て込めるものは当て込んでラフを作ります。その後は実際に現場で、スタイリストさん、メイクさんと話しながら撮影をして、構成していく。撮影の後で合成する要素は、本物の花やおもちゃを物撮りしてはめることもありますし、ネットでダウンロードできるようなフリー素材を使うこともありますよ。

---特にピンクのほっぺたが印象的です。

ほっぺがピンクで、目がキラキラしてて、肌がツルツルしてるのが、すごく好きなんです(笑)。全員をそうしたくなっちゃうんです。男性でも、おじいちゃんでも、おばあちゃんでも。

---このハッピーなテイストのルーツは
どこにあるんでしょうか。

中国とか北朝鮮にあるような、絵やグッズの感じは大好き。めちゃめちゃ好きですね。日本で言うなら、「総天然色」って書いてあるレトロな映画のポスターとか。

---バラが飛んでいたり、目に星が入っているのは、
少女マンガの影響もありそうですね。

あー、好きでした。たぶんそうですね。影響を受けたといえば、小さい頃に見ていたテレビやマンガですよね、きっと。あと、アイドルとか。トシちゃん(田原俊彦)とか、(松田)聖子ちゃんの世界観も好きですね。

---確かに80年代のカルチャーとリンクしている部分が
ありますよね。

テレビだと、ドリフとかひょうきん族とか、カックラキン世代なので。あの頃のお笑い全盛期的なのも好きなのかもしれないですね。元気が出るテレビとか、大映ドラマも。

---飯田さんの作品にはハズシがあったり遊びが
あったりして、笑いの要素が必ず隠れてるように思います。

笑えることはとにかく好き。楽しいのが一番好きなんですよね。写真を見て、爆笑でもいいし、微笑みとかでもいいんですけど、見た人に笑ってもらえるようなものを撮るのが好きなんです。

---被写体の豊かすぎる表情は、飯田さん自身が
「こんなふうにして!」とやってみせたり?

だいたいそうします。撮られる方はたぶんすごく恥ずかしいはずなので、こっちが恥ずかしくなくやることが大事かなと思って(笑)。

やっぱり自分の本業はあくまで
スチールだという気持ちがすごくあって、
それが自分の自信だったりもする

---現在のお仕事は、割合としてはスチールが多いですか?

はい。

---映像などは?

一番最近は、ビジュアルディレクションを務めた映画「ハンサム★スーツ」です。

---この映画でのビジュアルディレクションという
ポジションは、どこからどこまでの担当なんでしょうか?

普通の映画にはないポジションなので、皆さん不思議がられるんですけど、とにかく「見た目番長」みたいな感じですね。
最初の打ち合わせ段階から参加して、ストーリー、役者が決まり、監督と脚本家やプロデューサーが、「この人はこういう見え方にしたい」というのが出揃ったところで、役の性格から考えたファッションの系統とか、住んでる部屋の感じというのを少しずつ広げて作っていく。
ただ、私はアイデア出しがメインなので、大枠を決めて資料集めはするのですが、もちろんスタイリストさんや美術さんもいるので、私が投げたアイデアを形にしてくれるのはその方たちなんです。
監督が言うには、私は「美術の総長」。普段、美術の長がやることのプラスアルファ、ヘアメイクまでを総括するというポジションですね。

---映画にはこういうビジュアルディレクションで
関わる他に、過去には監督作品もありますが、
今後はいかがですか?

今後のことは、あまり決めていきたくはないんですが、やっぱり自分の本業はあくまでスチールだという気持ちがすごくあって、それが自分の自信だったりもする。あくまでその延長線上に何かお話が来た場合は、やることもきっとあると思うんですけど、本業をさし置いて今後は映像をやりたいという考えは特にはないです。

---核になっているスチールのお仕事と、そこから派生した映像など別のお仕事は、全然タイプの違うお仕事だと思うんですが、共通していること、同じ感性を使ってるなというところはあるんでしょうか?

根本は一緒じゃないですかね。自分の持っている世界観って、結局変えられないっていうか、ひとつしかない。だからそれが映画であろうとスチールであろうと、出せるものは変わらないんだなということはすごく痛感しましたね、映画をやって。

「ふんどし/祭り/関東」と検索

---ちなみに今進めている作品撮りはあるのでしょうか?

はい。2年くらい放ってあるんですけど(笑)。なんとか来年くらいには個展ができるんじゃないかな〜、と思っているものがひとつあります。
各地の祭りで、ふんどし姿の男を追った写真がすごく溜まってるんですけど、まだちょっと手をつけてなくて。祭りに出かけて行っては、ふんどしの人たちを見て、「イケてんな」と思ったら「すいません!撮らせてください!」ってナンパみたいな感じで(笑)。

---ふんどし男がいそうなお祭りを探して出かけるんですか?

ネットで「ふんどし/祭り/関東」って検索して。撮ってる自分はすごく面白いんですけど、絵はわりと真面目(笑)。合成はしてるんですけど、クールめな感じです。

---被写体は男性の方が好きですか?

仕事で撮る場合は女性の方が好きなんです。カラフルな服やヘアメイクで遊べるので、やりがいがあるんですよね。でも作品撮りの時だと、男の人の方が遊べるというか。

---のせられて結構いろいろやってくれるような。

それはあります。撮りやすいですね。

---のせ上手なんじゃないですか?

若い頃に仕事でやった街撮りで、いかに口説いて撮るかを鍛えられたんです。それですごく口がうまくなりました(笑)。

---このふんどしの人たちもみんなそうやって?

「もうすごい光ってるんですけど〜!撮らせてもらっていいですかあ〜」みたいな(笑)。

---まとまるのが楽しみですね。

来年にはなんとかしたいなーという感じです。

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Gallery

映画『ハンサム★スーツ』本ポスター他
制作年=2008年
クライアント=アスミック・エース エンタテインメント
AD=高橋朋子(東北新社)
ST=九
HM=松澤真弓(TTA)
美術=吉田透(サンクアール)
画像処理=結城明良(アマナ)
モデル=谷原章介、塚地武雅(ドランクドラゴン)
©2008『ハンサム★スーツ』製作委員会

映画『ハンサム★スーツ』ティザー用ポスター他
制作年=2008年
クライアント=アスミック・エース エンタテインメント
AD=高橋朋子(東北新社)
ST=九
HM=松澤真弓(TTA)
美術=吉田透(サンクアール)
画像処理=結城明良(アマナ)
モデル=谷原章介、塚地武雅(ドランクドラゴン)
©2008『ハンサム★スーツ』製作委員会

宝塚歌劇宙組公演『Paradise Prince』ポスター、
チラシ、プログラムほか
制作年=2008年
クライアント=阪急電鉄株式会社、宝塚歌劇団
モデル=宝塚歌劇団(宙組)大和悠河、陽月華、
蘭寿とむ、北翔海莉
©宝塚歌劇団

書籍『ブスの瞳が恋されて』カバー
制作年=2008年
クライアント=マガジンハウス
D=古川誠二(Dual Design)
ST=田中ひとみ(Susie Drops)
HM=双木昭夫(クララシステム)
モデル&著者=大島美幸(森三中)

キャドバリージャパン『スマートタイム』広告
制作年=2008年
A&P=マッキャンエリクソン
CD=入江洋平
AD=新里碧
C=斉藤芳弥
ST=冨田しおり
HM=大渡八千代
モデル=沖樹莉亜ほか
画像処理=青山深・馬場先聖子(ピグマリオン)

 

Profile プロフィール

飯田かずな
Kazuna Iida
Photographer

1973年東京都生まれ。
東京工芸大学短期大学部画像技術科研究課程修了。
雑誌、書籍、広告、CDジャケット、テレビなど幅広いジャンルで作品を発表。
主な仕事に、『ブスの瞳に恋してる』『ブスの瞳に恋してる2』(鈴木おさむ著)表紙、『小出恵介写真集』、宝塚歌劇団宙組公演「Paradise Prince」ポスターなど。また、つんく♂プロデュースのオムニバス映画「東京★ざんすっ」「マネーざんす」では映画監督を務め、映画「ラブ★コン」「ハンサム★スーツ」ではビジュアルディレクションを担当。写真集に『MIRACLE STARS 〜KAZUNA IIDA WORKS〜』『富子と君作』『Holiday』など。

URL hwww.iidakazuna.com

Item アイテム

絵本にも癒されるという。『はじめてのおつかい』(作・筒井頼子 絵・林明子)『ぐるんぱのようちえん』(作・西内ミナミ 絵・堀内誠一)いずれも福音館書店

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