写真を撮るための唯一の道具は自分肉体はもちろん、生理感や資質も含めて。だから、自分を作り、自分を出すことの繰り返しを続けていく

操上和美 Photographer

勉強して、次にセッションしながら
対象との距離を縮めていく

ー写真を撮りたいという欲求が起こるのは、
愛ゆえなんですね。

絶対的にそうでしょう。仮に依頼された仕事で「こういうのを撮ってください」と言われても、自分と何の関係もなかったら撮れないでしょ。
相手からの要求をもう一回咀嚼して、自分がそれに向かえるようなアイデアなり、方法なりを考えて、最終的に写真家と被写体の関係が成立するように、気持ちを盛り上げていくんです。仕事だからといって、被写体のことを「嫌いだなあ」と思いながら撮れませんよ。

ー具体的にはどういう手段があるのでしょうか。

観察して、何かを発見するってこと。対象のことをそんなに理解していない撮影の場合は勉強をして、まずその分だけ距離を縮めますね。それから現場で会って実際に観察して、セッションしながら対象との距離を縮めていく。これが一番面白い。そして、撮りながら自分の中で対象への触感みたいなものを確認した時に「行った!」と思って終わるんです。それを僕は“触る”って呼んでるんだけど、直接触るということでなくね。そうでないと永遠に終わらない。

ー写真を始めた当時からそういう方法でしたか?
それとも変化してきたのですか?

最初からそうだったというものでもなくて、自分が撮れたと感じるのはこういうものなんだって自己確認しながら、だんだんわかってきたという感じ。対象とは何なのかとか、自分と対象の距離感なんて、すごく個人的なことで、ほとんど生理に近いことでしょ。そんなこと、学校では教えてくれないですから。

ー自己確認のためには、
いろんなインプットもしてきたのでは?

本を読むとか、映画を観るとか、撮影現場や人生の中でいろいろな経験をしながらね。特に、文学作品というのは作家自身が体得したことが書かれているでしょう。そういうものからヒントをどんどん貯めていくんですよ。生きれば生きるほど、勉強しなければいけないと思う。今回も映画を撮ることによって、たくさんのことを学びました。

写真を撮ることは
自分の精神が行ったり来たりする
ある種の運動

ーあらゆることを貪欲に吸収していく感じでしょうか。

社会のことも含め、さまざまな事物すべてに対して、自分が何に反応、反射、感応しているかを、意識することですね。例えばテレビのニュースなら、それを自分のこととして捉えて理解しているか。そのことに対して、すっとカメラが向く反射神経も含めて。

ー反射神経となると、
運動能力が問われるのかと思ってしまいますが。

反射というのはフィジカルなことだけじゃない。感覚や精神的な反射、感応も含まれる。自分自身がある事象について何かを感じた時に、それに対して素直にすっとカメラを向けるという反射神経だよね。スポーツ写真じゃないから、瞬時にシャッターチャンスがどうこう……って意味ともちょっと違う。

ー操上さんがそれを意識するようになったのは
いつ頃だったんでしょうか?

写真の仕事をしていく中で、20代後半にはすでにそういうことを本能的に察知してやっていたかもしれない。写真を撮るっていうことは、自分の精神が行ったり来たりする、ある種の運動だって。こうやって言葉としてロジカルに解説できなかったかもしれないけど。

ーこれから写真をやっていこうという人たちは、
撮りたいという欲求とどう付き合って仕事にしていったら
いいでしょうか。

撮って確認すること、自己確認の連続しかないと思う。仕事っていうのは目的がはっきりしている。約束事を守って、ある程度きちっとその答えを返してあげれば、ビジネスとしては成り立つんです。でもそれだけじゃなくて、仕事の中に、相手が求めてる以上にたくさん自分の思いを入れていけば、自分がどんどん向上していく。自分についてわかることが一番大事なんだけど、写真についてもわかるかもしれないし。
仕事でしか返す答えがないんだったら、その中に100%以上の自分を出していくことです。

そう簡単に、自分のことはわからない

ーそのためには、自分というものがなければいけないですね。

何かをあげるためには持ってなきゃいけないから、あげるべきものを貯める。みんな自分自身が財産なんですよ。写真を撮るための唯一の道具は自分、肉体はもちろん、生理感や資質を含めて。

カメラは道具なんだけど、撮れば写るという点では、書けば文になる鉛筆と同じようなものでしょ。写真にせよアートにせよ、作品の良し悪しに基準なんてないですよね。そういう意味では、自分を作り、自分を吐き出すことの繰り返しを続けていくしかないかもしれない。そんな簡単にみんな自分のことなんてわからないから。わかりきっちゃったら、写真じゃなく違うことやった方がいいんじゃないかな。

ー操上さんも、まだ探している?

もちろん。20代の頃と今を比べても、そんなに変わらないですよ、何かを欲しがる感じというのはね。そんな渇望感は「ゼラチンシルバーLOVE」の中にもよく出ていると思う。自分というものは、決まりきったことだけやって完結するものでもないでしょう。

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Profile プロフィール

操上和美
kurigami kazumi
Photographer

1936年北海道生まれ。
1961年に東京綜合写真専門学校卒業。1965年よりフリー。広告写真の第一人者として、第一線で活躍を続ける。主な受賞歴に、毎日デザイン賞、ADC会員最高賞、講談社出版文化賞、NY ADC賞など。写真集に『中村七之助』『中村勘太郎』『SHINNOSUKE(市川新之助)』『NORTHERN』『kazumi Kurigami Photographs CRUSH』『Hara Museum of Contemporary Art』『陽と骨』など。現在、ピラミッドフィルム名誉会長、及びキャメル代表。

URL http://www.kurigami.net/

Item アイテム

『CAMEL』0号
操上和美が、写真の夢と企みを内包した運動としてのマガジンを09年3月に創刊する。
「肉体を浸食するその何ものかに向かってシャッターを切る時、魂を癒されやがて欲望の対象は形を現す。
つまり写真行為は一種の解毒剤なのだ」(メッセージより一部抜粋)
0号は無料 『CAMEL』の情報に関しては下記まで
http://www.kurigamikazumi.com/

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