環太平洋の国々や地域を、島の連なりとしてもう一度とらえ直したい。

第7回 石川直樹 Photographer

出会いの中で少しずつ見えてくるものがある。
それに素直に従うだけ

---次々と作品を発表されていますが、現在は?

日本の北と南の島々を撮っています。「多島海」あるいは「群島」のことを英語でARCHIPERAGO(アーキペラゴ)というんですけど、日本も、北海道、本州、四国、九州、そしてそのまわりに散らばる無数の島々から成っていますよね。トカラ列島から、奄美、沖縄、八重山、台湾、フィリピンなど南方へつながっていく島々や、反対に青森、北海道からサハリン、千島列島、アリューシャン、アラスカといった北方へつながっていく島々もある。
環太平洋の国々や地域を、島の連なりとしてもう一度とらえ直したいと思っているんです。そうした試みのなかで今いる場所を相対化していって、自分なりに日本とは何かということを考えていきたいなと。島はもう10年くらい撮っているので、そろそろ形にできるかなという感じですね。

---石川さんの写真集は、いつも鮮やかにテーマが
立ち上がっていますが、テーマに沿って
写真を撮られているんですか?
それとも撮った写真の中にテーマを
見つけるのでしょうか?

テーマを先に決めて撮っているわけじゃないですね。旅が最初にあって、そこでの出会いの中で段々と見えてくるものがあって、それに素直に従っていくというか。

常に、興味を持って撮っている対象が複数あります。それ以外の対象でも旅先ではいいと思えばずっと撮り続けていて、そのうちにぼんやりとした共通点みたいなものが立ち現れるんです。ベタ焼きなどを見直しているうちに、意識していなかったけど、実はこういうものをたくさん撮っていたなと気づく。そして、まとめられるかなと思った時点で、足りない部分があると思ったら、もう一度旅に出てみる。この繰り返しですね。

---島のどんなところに惹かれて?

トカラ列島以南の島々に伝わっている仮面のお祭りなんかは、あきらかに本州の文化と違うんですよ。そこには、東南アジアやフィリピン、台湾との繋がりが見え隠れしていると同時に、日本との断絶のようなものも垣間見える。また、北に目を転じれば青森から北海道へ続く北の島々は、国境で隔てられながらも国を越えたつながりを感じたりする。サハリンやアリューシャン列島の文化は北海道ともつながっていますしね。日本という場所は、方角で言うと東西で論じられがちですが、南北で考えられることが本当に少ない。柳田国男しかりです。そのあたりのことを、実際に旅しながら考えられたらおもしろいなと。

国境によって区分けされた世界地図に僕たちは慣れてしまっていますよね。そうやってある大きな存在を自明のものとしてとらえてしまうことによって、見えなくなってしまったものがたくさんあると思うんです。意識を超えたものや、偶然を受け入れていくためにも、世界を知ったつもりになって見切ってしまわないで、もう一回自分なりに世界を見てみたいと思ったんです。 

前述の写真家という肩書きの話ではないですけれど、言葉で括られることによって見えなくなってしまうものが必ずある。それを一度とっぱらって、世界そのものと向き合いたい、と。写真は言葉で文節化される以前の世界と向き合うためにあるわけで、言葉で説明がつくような世界を撮ってもしょうがない。それなら文章を書けば十分なわけですから。

言葉のイメージをとり払い、驚きを探すには、
ただただ考え、そしてなによりも、
見続けるしかない

---旅に出ていろんなものを見ることも、
自分の手で世界を知りたいという気持ちに
つながっていますね。

まずは驚きたいという気持ちがあって。単純に見たことがないものを見たら楽しいですよね。そういったことをやり続けていると、同時に見慣れたものの中にも驚きがあるということがなんだかわかっているんですよ。

---そういえば、『Mt.Fuji』も、私の知っている富士山の
イメージとは全く違うものが写っています。

「富士山」という三文字から想起するものっていろいろあるとは思うんですが、たいてい巷に氾濫するイメージが刷り込まれていて、あの三角形の山影がすぐに頭に浮かんでくる。

でも僕にとっての富士山のイメージは違うんです。体を浮かせるくらいの強烈な風であったり、固く締まった雪の斜面などがまず頭に浮かぶ。それは自分が十代の時に、あの山でさんざん雪上訓練をしたこととも関係していると思います。こうしたイメージのギャップについて考えているうちに、こびりついた一般的なイメージから離れて、「富士山」と名付けられる以前の山そのものと向き合うことができないだろうか、と考えました。それが「Mt.Fuji」というシリーズだったんです。

---どうやったらいつも新しい気持ちで
向き合えるんでしょうか?

どうでしょうね。たぶん、究極的には記憶喪失になってしまうことかもしれないし、そうでないとしたら、それは方法ではなくただただ考え、なによりも見続けるほかないと思います。とにかく見ることしか写真家はできないですよね。僕なんかは特に手探りで世界と向き合って、自分の眼で見て、感じて、触れて、ようやく自分のものにしていかないとなあ、と。

---『ARCHIPERAGO』は、いつごろ発表の予定ですか?

年内には発表できたらと思っています。これからも、1年に1回、新作を出していきたいです。常に新しいものを撮って発表し続けたいですね。

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Profile プロフィール

石川直樹
Ishikawa Naoki
Photographer

1977年東京生まれ。
2000年、「POLE TO POLE 2000」に参加して北極から南極を人力踏破、2001年、七大陸最高峰登頂を達成。『THE VOID』(ニーハイメディア・ジャパン)により、さがみはら写真新人奨励賞、三木淳賞受賞。先史時代の壁画をめぐる旅をまとめた『NEW DIMENSION』(赤々舎)、北極圏をテーマとした『POLAR』(リトルモア)の2冊により、日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞を受賞。開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)ほか、著書も多数。最新写真集『Mt.Fuji』(リトルモア)『VERNACULAR』(赤々舎)をはじめ、近年の活動が評価されて2009年度の東川賞新人作家賞を受賞した。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。多摩美術大学芸術人類学研究所研究員。

URL http://www.straightree.com/

Item アイテム

石川テレビ放送のマスコット。石川さんの靴下、ケータイストラップ、チラシ「友人にもらったんです。僕も石川さんだから(笑)。頭のところがほら、漢字の“石”の字になっているんですよね」
◆石川テレビ放送 石川さんショップ 
http://www2.enekoshop.jp/shop/i-land/

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