7年間ほぼ毎週末通って撮りためた膨大な作品の中から厳選してつくりました。

福田啓人 Photographer

正直、グランプリの喜びよりも、いままで撮ってきたものが写真集になるという喜びのほうが大きかった。

多い日には1日1000回以上シャッターを
切りますが、納得がいくものは、
せいぜい1、2枚ぐらいですね

---第1回「ハイフォトアワード」グランプリ受賞おめでとうございます。

ありがとうございます。名前を呼ばれたときには「やった!」という心境だったとは思うのですが、今でもなかなか実感がわきません。でも、なによりカワセミの写真集を出せることが、とにかく嬉しくて。正直、グランプリの喜びよりも、いままで撮ってきたものが写真集になるんだという喜びのほうが大きかったです。
写真集がだんだんできてきて、その帯に、ハイフォトアワードグランプリ受賞作品と書いてあると、ああ、グランプリを取ったんだなと。

---写真集づくりはいかがですか?

刷り出してもらったものを見たら、一部カワセミの羽の色が日焼けした感じに見えるものがあったので、印刷会社の方に、直してもらいました。微妙な色の調節が難しいですね。

---被写体であるカワセミを、7年間も追い続けていらっしゃったとか。

28歳で写真を撮り始めてから、すぐにカワセミと出会って、それ以来7年間撮影し続けてきました。今では車ですが、以前は運動も兼ねて撮影場所には、週末ごとに自転車に機材を積んで40分かけて通っていました。

---機材はかなりの重さですよね。

ええ、私が今使っているレンズ600mmF4は、5kg以上あるのでレンズだけでもかなりの重さです。レンズ、カメラ、雲台、三脚、バッグ、その他備品など全ての機材を合わせると20kg近くになります。それを担いで自転車で移動していました。

撮影日には、夜明けに家を出て日没まで粘るんですが、初秋のこの時期だと早朝5時に現場入りして17時頃に撤収という感じですね。餌付けをして撮る写真家もいますが、そういうのは個人的には好きじゃないので、撮れるかどうかは、まったくカワセミしだい。待っていても、1度も現れないときもあって、そんな日にはもちろん収穫ゼロです。多い日には1日1000回以上シャッターを切りますが、それでも、納得がいくものは、せいぜい1枚から2枚ぐらいですね。今回、受賞したのは、その7年間に撮りためた、膨大な写真の中から選んだものです。

---その間、何羽ぐらいのカワセミを写しているんですか?

カワセミは、短いと1年半ぐらいの命。寿命は平均してだいたい2年程度です。
私が通っている間にも、時には猫にやられたりしていなくなって、新しいのが現れるという繰り返しでした。彼らはなわばりを持つ性質がありますから、その鳥がいなくなると、よそから他のカワセミがやってくるんです。代替わりして5羽以上は撮り繋いでいると思います。

偶然出会った。
一目惚れでした

---魅力を教えてください。

なんといってもその色です。羽は光沢のある青に見えるのですが、実は構造色といって、羽自体は無色透明なんです。CDやシャボン玉が虹色に光って見えるのと原理は同じ。人間の目には青だけが反射して見えるので、あのような色に見えるんです。ですから、太陽の光の加減によって瞬間、瞬間で、色が変わって見えます。朝や夕は、緑がかった翡翠色、そして真昼の太陽の下では、鮮やかなコバルトブルーに輝きます。そして、水中の魚を取って水からあがったときの、青く光る羽の色と、その周りに散らばる水滴。撮っていて息を呑む瞬間です。

いつも撮っている場所では、朝が逆光で、午後2時頃が順光になります。だから、ベストショットが撮れるのは、昼間なのですが、どの時間帯やどの季節にも、様々な表情をしたカワセミを見ることができるので、写真集ではその点を見てもらえればと思っています。

---写真を撮るようになったきっかけは?

写真に出合ったのは、会社勤めをしていた28歳の時でした。体調を崩して、医者からはなるべく身体を動かせと。それで歩き始めたんですが、ただ散歩だけではつまらない。それで写真を撮り始めました。最初は風景や、山野草、それから横浜在住なので、夜景なんかも撮っていましたね。
ところが、偶然ある場所でカワセミと出会ったんです。なんていうか、「発見」してしまったんですね。一目惚れでした。自然界で、どうしてこんな鮮やかな色の生き物がいるんだろうと、衝撃を受けました。それまでは、特に野鳥が好きだったわけではなかったんですが、それ以降は取りつかれてしまった感じです。

最初の一枚は、ズームレンズで枝にとまっているのを写したものです。デジタルで撮っているので、パソコンのモニターに落として見たんですが、もやっとしていてキレがなくて、まったく鮮やかさが再現できていない。がっかりしましたね。でも、自分の腕がいけないんだろう、と最初は思っていました。80-400mmのズームレンズを持っていたので、それを持って、毎週末、撮りに行くんですが、ぶれるし、なかなか思うようには撮れない。そのうちに、撮影に来ている方から単焦点のレンズで撮った写真を見せてもらう機会がありました。その写真が、すごくきれいだったんです。どうしても我慢できなくなって、ニコンの単焦点レンズを中古で買ってしまいました(笑)。カワセミと出会って数ヶ月後のことです。300mmF2.8のレンズでした。

---写真の出来はどうでしたか?

色の抜け感が、ぜんぜん違っていました。もともと持っていた80-400mmのレンズで撮ると、まるで写真に1枚プラスチックの板をはさんだような、もやっとした感じになってしまう。でも、単焦点レンズで撮ると、自分が思い描いていた色が出たし輪郭もシャープだった。最初の一枚は枝にとまって横を向いているありふれたポーズでしたが、本当に嬉しかったですね。

第1回「ハイフォトアワード」
High photo Japan主催の公募展。全国から432点の作品が集まり、写真集出版部門、スライドショー部門それぞれ第1次審査を通過した20名の作品の中からグランプリ、準グランプリ、ユーザー賞が選ばれた。2009年3月開催。
第1回審査員
伊藤高(プチグラパブリッシング)鎌田恵理子(求龍堂)後藤繁雄(クリエイティブディレクター)坂田大作(コマーシャル・フォト編集長)藤田宏之(ナショナル・ジオグラフィック編集長)柳谷杞一郎(ハイフォトジャパン編集発行人)安在美佐緒(ハイフォトジャパンマガジン編集長)

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Profile プロフィール

福田啓人
Fukuda Hiroto

1973年横浜市生まれ。
ネイチャーフォトグラファー。カワセミが中心の撮影だったが、現在は自然すべてが被写体と考え、新たな撮影に挑んでいる。目標は絵画のような写真。社団法人日本写真協会会員 財団法人日本野鳥の会会員財団法人日本鳥類保護連盟会員1994年 学校法人岩崎学園情報科学専門学校CG科卒業 2009年 写真の学校/東京写真学園プロフェッショナルコース卒業 同年3月、第1回「ハイフォトアワード」グランプリ受賞 10月初の写真集『カワセミ ある日、カワセミに出会いました。』を発売(雷鳥社 1680円)。

Item アイテム

ハンターとしての瞬間、「翡翠」と称される美しさ、ひなどりのあどけない仕草、様々な表情を7年間にわたって撮影した写真集。
『カワセミ』(雷鳥社 1680円)

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